石巻ASATTEについて
石巻ASATTE(あさって)は、震災からの復興を目指して、2016年10月に立町二丁目5番に完成した再開発ビルの、立町通りに面する一階に設けられた店舗です。石巻まちなか復興の一翼を担おうと、「きょう・あす・あさって、日々の暮らしを、おいしく・豊かに・心地よく」をテーマに、2016年11月に仮オープンした後、2017年はじめからは6つの店舗がそろいました。中核は、石巻うまいもの(株)の直営店「石巻うまいものマルシェ」と「日高見レストラン」。しかし、マルシェは、2019年7月に魚市場に併設された市水産総合振興センターに移転、あわせてレストランも閉店、4店舗だけの営業が続いていました。
2021年1月に、奥田シェフのイタリアン・レストラン、アルケッチャーノが期間限定の「ごあいさつオープン」。再びレストランに火が灯りました。幸にも多くの皆さんに歓迎され、3月から、復興10周年に先立って本格オープンしようと準備が進んでいます。今後は、進行中の再開発プロジェクト「石巻まちなかウエルネス・タウン」との一体的な運営をめざします。マルシェのあった場所は、イベントスペースとして活用し、ウエルネス・タウンの情報を発信していきます。
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ASATTEが入居する建物は「立町二丁目5番地区第一種市街地再開発事業」として建設されました。震災のあった2011年の10月ごろ、中央3丁目1番地区とともに、地権者から、復興に役立つよう再開発に率先して取り組みたいという意向の表明があり、12月に発足した「コンパクトシティいしのまき・街なか創生協議会」の「事業部会」で検討が開始されました。そして、中央三丁目1番地区は2016年1月に、立町二丁目5番地区は同年10月に竣工しました。
立町二丁目5番地区再開発は、本家秋田屋の、大正5年に建てられた木造和風建築と土蔵、そして美しい庭が現存する敷地を核に、隣接する土地の地権者が参加して実施されました。敷地は、表は立町大通りに、裏は新田通りに面し、面積は約0.3haです。古い建物は、今回の震災にも耐え、浸水も床下にとどまりました。再開発では、古い建物と庭をそのまま保存し、その周りに新しい建物を配置することを方針としました。
具体的には、立町通りぞいと北側の新田通りぞいに4~5階建ての棟を配置し、街区内部には2階の居住兼避難フロアの上に3層の住宅を2棟配置しています。全部で53戸の住宅ができ、うち立町通りぞいの21戸が災害復興住宅です。その余は「デュオヒルズ石巻」として分譲されました。1階は、立町通り沿いは「ASATTE」、新田通りぞいは石巻ロイヤル病院が運営するリハビリテーション・センターと昔からのテナントの床屋さん、その他は駐車場です。駐車場は表から目立たないよう配置してあります。
このプロジェクトの牽引役であった本家秋田屋の御当主・浅野仁一郎さんは、2015年3月に、プロジェクトの完成を見ないまま、65歳で急逝されました。とても人望があつく、石巻まちなかは、大切なまちづくりのリーダーのひとりを失いました。
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ASATTEをどのような店舗にするかを話し合う様子が、2013年7月に放映されたNHKの番組「復興サポート:みんなで元気な商店街をつくろう―宮城・石巻」で紹介されています。参加者が、模型を見ながらいろいろなアイデアが出した後、番組ナビゲータの迫田朋子さんが次のように締めくくりました:
「みんなのアイデアが詰まった商店街のイメージが出来上がりました。ここは石巻の人びとが愛し、誇りにしている品々が集まる宝箱、そして石巻を訪れる人びとがその魅力を発見する場所です。中庭ではお祝いの行事が行われ、郷土料理を囲む人びとの笑顔をお年寄りたちが暖かく見守っています。周りの住宅には、仮設住宅から多くの人びとが移り住み、新しいふるさととします。ここを復興の先頭として石巻の商店街が生まれ変わります。」
このような検討が、ライフスタイル・ショップASATTEへ結実しました。しかし、夢の実現は道半ば。今年からのASATTEのリニューアルと、今年末から来年にかけてオープンするまちなかウエルネス・タウンをきっかけに、次の一歩へ踏み出します。
◉ASATTE年表
2011年10月ごろ 地権者が再開発へ取り組む意向を表明
2012年 2月末 再開発準備組合設立
2013年 3月 都市計画決定
2014年 3月 再開発組合設立
2015年 7月 着工
2016年10月 竣工
2016年11月25日 ASATTEプレオープン
2017年 9月 住宅金融支援機構理事長感謝状(再開発組合)
2017年10月 第29回住生活月間功労者国土交通大臣表彰
(再開発組合、株式会社まちづくりカンパニー・
シープネットワーク)
2019年 7月 うまいものマルシェ移転、日高見レストラン閉店
2021年 1月 アルケッチャーノ ごあいさつオープン
◉参考文献:
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福川裕一・城所哲夫『〈まちなか〉からはじまる地方創生:クリエイティブ・タウンの理論と実践』岩波書店、2018年3月
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「まちづくり会社主体の復興計画:石巻クリエイティブタウン:石巻市立町二丁目5番地区・中央三丁目1番地区市街地再開発事業(『新建築』92-2、2017年2月、pp.136-143)
◉デザインコード
❶プロムナード(両側町)
❷歩く目標(Path & Goal)
❸2階のメインフロア(避難階)
❹最高高さ=数階
❺現代版町家
❻分棟型
❼通りに面する主棟
❽三層構成
❾道幅と建物の高さの比(D/H)
❿中庭型
⓫連なる棟
⓬中庭ゾーン
⓭Rows
⓮外階段
⓯路地
⓰通りと会話する窓
⓱通りに開く店舗
⓲オープンテラス
⓳居間のようなベンチ
⓴ソフトエレメント